今年10月27日、某商業出版社から発売されたムック本「日本酒入門」。
こちらは同年3月に発売された書籍「うまい日本酒の選び方」の内容を著者に無断で再編集したものとして、発売後に著者から抗議を受けて回収に至る騒ぎになりました。
このような、いわゆる”パクリ本”騒動は、今に始まったことではありません。
出版後に売上が好調だった書籍の一部を抜粋して、新たに出版する書籍にその内容を加えたり、構成・デザイン・キャッチコピー・登場人物名などごく一部の情報のみを編集し、著者気付かれないよう出版するという巧みな方法を行う商業出版社は数多くあります。
一体なぜこうした問題が起きてしまうのか。また、回避する手立てはないのでしょうか。
今回は今知っておきたい商業出版のリスクについて考えてみましょう。
過去発生したパクリ問題について見ていくと、”立場の弱い著者”が被害にあっていることが見受けられます。例えば、初めて作家デビューを果たす著者、人気作家ほど収入はないが印税などを頼りに生活している著者(フリーライターやフリーランス)などが挙げられます。
前者は、これまでたくさんの原稿を応募し続け、ようやく商業出版のお声がかかった作家の卵に多く、どうしても出版したいという思いや金銭的な余裕のなさから不利な契約をしてしまい、校了直前に出版が中止となり原稿やネタだけ持っていかれた・・・というものです。過去執筆してきた大切な原稿ですが、やはり足元を見られてしまうとそれらを出版社に渡すしかなく、そのパクリ本が出版されてもある程度改変されたものであれば、訴える事は難しいものです。
後者は、高度なライティング能力や専門的な分野に特化した執筆ネタなどを持っている著者で、執筆活動を収入源としているため、やはり金銭的な余裕のなさから不利な条件を呑まされることがあります。
少しでも仕事が欲しい著者であれば、契約前の段階で不満があったり低額な報酬しか貰えないと分かっていても、頷いてしまうもの。商業出版社にとっては、自身らの都合で面白いネタを集めて使いまわす事ができるため、非常に有益な存在であると言えます。
このように、デビュー前という立場や収入上の問題から、パクリ本のターゲットにされてしまう著者が多く、今回のような問題が繰り返されてしまっているのが現状です。
また、商業出版社の方を見ても、”パクリは許される”という意識が蔓延してしまっているように見受けられます。例えば、今年大きな話題を呼んだオリンピックのエンブレム盗用疑惑。
このデザインを担当した人物に対し多数の苦情が寄せられていますが、一方で”一部をパクる事は当たり前” ”元ネタは必ずあるもの”と考える業界関係者もおり、それは書籍のデザインに関しても言えることです
奇抜な表紙デザインの書籍がひとたび売上げを伸ばしたとしたら、その書籍はデザイナー間でいっせいにパクリの対象となります。デザインに限らず、書籍のテーマや文体、構成なども対象になりえるのです。
これほど世の中に広がっているパクリ問題を止めることは困難ですが、今回の事例のように著者がほぼ同じであると感じるほどの編集内容であれば、未然に防ぐことが出来る可能性もあります。
商業出版社側に対し、どの程度まで二次利用の許可を求めるのか、その詳細を明記してもらうこと。契約前にスケジュールや金額などの詳細情報を掲示してもらい、後々変更できないように契約書の取り交わしを行うこと。編集担当者が信頼できる人物であっても、会社としてパクリに許容な姿勢をもっていないか、など事前にいろいろなことがチェックできますね。
また、執筆した原稿や自身の企画に強い自信がある、絶対に真似されたくない、といった考えがあれば、やはり新人賞などに応募したり、自費出版をするという選択誌もあるのではないでしょうか。
著者の立場や状況、関わっている出版社によって起こりうる問題、事前に取ることが出来る対策は様々です。まずは、今回のような問題が日々起きていることを把握し、どんなリスクがあるのかを知っておきましょう。
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