コラム

2016年本屋大賞ノミネート作品が決定!**

全国の書店員が選ぶ1番売りたい本を決める「2016年本屋大賞」のノミネート作品が決定されました。本賞の運営する本屋大賞実行委員会に加盟する全国435書店、書店員総勢552人の投票の結果、上位10作品として選ばれた作品をご紹介致します。

昨年末話題になったあのミステリー作品や直木賞候補など話題作が勢揃い、といった結果になっています。今後の作品制作のテーマ選びなどにお役立てください。

 

「2016年本屋大賞ノミネート作品」※作品名50音順

1.『朝が来る』 辻村深月 著
不妊治療と養子縁組を巡る女性の実情を描く社会派ミステリー。親子3人で平和に暮らす栗原家に突然かかってきた一本の電話。電話口の女の声は「子どもを返してほしい」と告げたーー。

2.『王とサーカス』 米澤穂信 著
2001年に実際にネパールで起きた王宮事件を基にして描いた壮大なミステリー。元新聞記者の太刀洗万智は知人の依頼で海外旅行特集の取材のためネパールに向かうが、王宮の存続を揺るがす王族殺害事件に巻き込まれていく。

3.『君の膵臓をたべたい』 住野よる 著
偶然、「僕」が病院で拾ったのは「共病文庫」という一冊の文庫本。それはクラスメイトである山内桜良が膵臓の病気で間もない命である自分の人生を綴った日記帳だった。【名前のない僕】と【日常のない彼女】が紡ぐ、終わりから始まる物語。

4.『教団X』 中村文則 著
謎のカルト教団と革命の予感。4人の男女の運命が重なり合い、日本を根底から揺さぶり始める。神とは何か、運命とは何か。576頁に及ぶ著者最長にして圧倒的最高傑作。

5.『世界の果てのこどもたち』 中脇初枝 著
戦時中、高知県から親に連れられて満洲にやってきた主人公の珠子。言葉も通じない場所での新しい生活に馴染んでいく中、彼女は朝鮮人の美子と、恵まれた家庭で育った茉莉と出会う。三人は友情で結ばれるが終戦が訪れ、運命は三人を引きはなす。戦時中の満洲で出会った、三人の物語。

6.『戦場のコックたち』 深緑野分 著
一晩で忽然と消えた600箱の粉末卵の謎、不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的、聖夜の雪原をさまよう幽霊兵士の正体…誇り高き料理人だった祖母の影響で、コック兵となった19歳のティム。彼がかけがえのない仲間とともに過ごす、戦いと調理と謎解きの日々を連作形式で描く。

7.『永い言い訳』 西川美和 著
長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが...。突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。

8.『羊と鋼の森』 宮下奈都 著
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

9.『火花』 又吉直樹 著
お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ。「文學界」を史上初の大増刷に導いた話題作。

10.『流』 東山彰良 著
1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ!友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。

 

『君の膵臓をたべたい』にみるアマチュア作家の可能性

 

今回のノミネート作品の中で特に注目したいのは、住野よる氏の『君の膵臓をたべたい』です。一見タイトルだけみるとカニバリズム(食人俗)の話かとギョッとしますが、内容は高校生の男女の恋愛を綴った小説です。
著者の住野よる氏は高校生の頃から小説を書き溜めては来られたそうですが、本作の発表まではまったくの無名。アマチュアとして小説を執筆しており、それを小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿したところ、出版社から声がかかり、今回プロデビューを果たされたとのことです。
出版業界全体に、まだ見ぬ才能の発掘の可能性、アマチュア作家市場のポテンシャルを強く感じさせた作品となりました。

今回の選考対象となったのは、2014年12月1日から2015年11月30日の間に刊行された日本のオリジナル小説です。ベストセラーランキングにはランクインしていなくとも、書店員さんに読んでもらい、「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店頭に並べたい」と思った本が選ばれる点が他の賞との大きな違いになります。
2月29日までに二次投票が行われ、4月12日に大賞が発表されます。過去にも多数の作品がこの賞の受賞によりドラマ化、映画化が決定しており、各メディアの注目も集まっています。

果たしてどの作品が大賞を受賞するのか、注目です。

 

幻冬舎ルネッサンス

太田 晋平

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