装丁は、書籍の魅力を大きく左右する非常に重要な要素です。
装丁とは、書籍の外側のデザインのこと。
サイズや紙の質感、使用するフォントや色使い、全体のレイアウトなど様々な点を考慮して「美しい」書籍をつくりあげる工程です。
本コラムでは、その装丁において最高峰の完成度を誇ることから「世界一美しい本」として有名な『ケルズの書』をご紹介しましょう。
『ケルズの書』(羅:Codex Cenannensis 英:The Book of Kells)は、8世紀に制作された手写本の福音書です。
イギリスあるいはアイルランドのコルンバ修道院で制作され、ケルズ修道院で完成されたためこの名がつきました。
同書は『ダロウの書』(英:Book of Durrow)、『リンディスファーンの福音書』(英:The Lindisfarne Gospels)という福音書とともに「三大ケルト装飾写本」のひとつとされ、アイルランドの国宝となっています。
『ケルズの書』は、アイルランドのダブリン大学に附属するトリニティ・カレッジ図書館に所蔵されており、国内外問わず多くの旅行者がこの本を一目見ようと訪れます。
人々を惹きつけるのは、その繊細で色鮮やかな図像や装飾文字です。
十字架、菱形、三点文様などの抽象的な図形や、4人の福音書記者を表した人物画、キリスト教に深く関わる動物などの装飾絵が盛り込まれています。
キリスト教において最も重要な象徴である十字架をはじめ、三点文様は三位一体を、菱形はキリストや宇宙、神の言葉を表しています(余談ですが、本書が所蔵されているトリニティ・カレッジ図書館の「トリニティ」も三位一体という意味です)。
文字も同じく様々な図柄で修飾されており、本の内容を強く印象づける働きをもっています。
なお『ケルズの書』には羊皮紙が使われており、着色は地元アイルランドで採取されるインディゴや大青、石膏、緑青、石黄などの顔料を使用して描かれています。
目に見える美しさだけでなく、材質にも強いこだわりが感じられます。
『ケルズの書』については、残念ながら一部が失われてしまっているため、その元々の内容を完璧に窺い知ることはできません。
しかしその美しい装丁から、作成者の情熱は充分に伝わってくるはずです。
本書が現代にまで受け継がれているのは、他ならないその美しさのゆえである、とも言えるでしょう。
美しさはそれ自体が力となって人々に畏敬の念を抱かせ、それを守り継ごうという意志を動かすのです。
なお『ケルズの書』の内容には、 バーナード・ミーハン 著、鶴岡 真弓 訳『ケルズの書』(2015年、岩波書店)を通じて触れることもできます。
ぜひ手にとって、受け継がれてきた美を愉しんでみてはいかがでしょうか。
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