ここ数年「ライト文芸」の書籍が急増していることをご存知でしょうか。
「ライト文芸」とは、ライトノベルから派生し、現在独自の地位を確立するにいたった新ジャンルの小説作品です。
本コラムでは、ライト文芸とはどのような作品であるかをご紹介したうえで、それがどのようにライトノベルと袂を分かつこととなったのかを解説します。
ライト文芸レーベル「集英社オレンジ文庫」の編集長・手賀美砂子氏は、ライト文芸であるためには「登場人物が魅力的であること」が不可欠だと述べています。
この特徴づけは、ライト文芸の特徴を端的に表しています。
「集英社オレンジ文庫」創刊の3年前、2012年8月に刊行された『日経エンタテインメント!』では、現在「ライト文芸」と呼ばれる作品たちが「キャラクターノベル」「キャラノベ」と呼ばれていました。
このことからも、ライト文芸にとって登場人物がもつ重要性は明らかでしょう。
例えば『日経エンタテインメント!』では、以下の書籍がライト文芸(キャラクターノベル)として挙げられています。
・東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』
・三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』
・三浦しをん『舟を編む』
・有川浩『三匹のおっさん』
ここで紹介されている作品4点を見ても、キャラクターが目立つ作品であることが分かりますね。
東川氏の『謎解きはディナーのあとで』は、財閥の令嬢でありながら刑事になった主人公と、彼女に仕える毒舌の執事の軽妙なやりとりが魅力の作品です。
同作は2011年に実写ドラマ化されており、同時期のライト文芸ブームの重要な火付け役となりました。
ここまでのご説明で「キャラクターを重視する」というライトノベルとの共通点が垣間見えたかもしれません。
しかし、キャラクターが重要であるのはどの小説作品であっても同じこと。
ライト文芸が「ライト」である理由は、ライトノベルとの関係性を知ることで初めてはっきりします。
ここで、ライト文芸レーベルの元祖ともいえる「メディアワークス文庫」を取り上げましょう。
同レーベルのキャッチコピーは「ずっと面白い小説を読み続けたい大人たちへ──」というもので、中高生ではなく大人がターゲットとして設定されていることがわかります。
もっと言うと、同レーベルで刊行される書籍は「「電撃文庫」を読んで大人になった読者や、最近おもしろい小説がないと思っている読者」(電撃オンライン「新文庫レーベル「メディアワークス文庫」が2009年冬創刊! 電撃大賞に新部門も」)に向けて刊行されています。
ライトノベルを読んで育った大人たちがターゲットなのです。
またライト文芸においては、読者だけでなく作者にも、ライトノベル育ちの方が多くいらっしゃいます。
例えばライト文芸の人気作『ビブリア古書堂の事件手帖』の作者である三上延氏も、ライトノベル系の大手新人賞である「電撃大賞」からデビューを果たしています。
したがってライト文芸は、ライトノベルを読んで育った読者と、ライトノベルを書いて育った作家とが作り上げているジャンルといえます。
ライトノベルからライト文芸へ、作家と読者がともに成長していく、と言い換えてもいいかもしれません。
最後に本コラムでご紹介した内容をおさらいしましょう。
・ライト文芸で何より重要なのはキャラクター
・ライトノベルの読者・作家が、ライト文芸の読者・作家になるケースが多い
ライトノベル作品が好きだった方であれば、きっとライト文芸も好きになるはずです。
二つのジャンルを読み比べて、違いを楽しんでみるのも良いでしょう。
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