みなさんは「作家=職業」というイメージをお持ちかもしれませんが、文筆業だけで食べている作家はわずかです。
例えば、19世紀末のミステリー作家コナン・ドイルは、自分で開業した病院で患者を待つ間に、あの名探偵シャーロック・ホームズを生み出しました。
現在の日本で活躍されている作家さんの中にも、実は別の肩書きを持っている、いわゆる「兼業作家」の方がたくさんいます。
今回はそんな多彩な作家さんたちをご紹介しながら、兼業作家の魅力を探ります。
小説「孤高のメス」などのヒット作を生み出した医療作家です。
優秀な外科医・当麻鉄彦が、さまざまな困難を乗り越えながらも手術を成功させていく奮闘劇は、ドラマチックでありながらも非常にリアルで反響を呼びました。
実は大鐘氏は現役の医師であり、現在は兵庫県南あわじ市立阿那賀診療所長を務めています。
ですから、作品の多くが医師としての壮絶な実体験を積んだからこそかけるものです。
例えば、「孤高のメス」の中に出てくる「エホバの証人の無輸血手術」は、大鐘氏の経験から書かれたもので、その激闘に読者はみな衝撃を受けるでしょう。
電撃文庫で「都市シリーズ」などのヒット作を執筆した川上氏は、大学卒業後からゲーム制作会社に勤めるゲームクリエイターです。
1996年に、「パンツァーポリス1935」という作品で電撃ゲーム小説大賞金賞を受賞し作家デビューしました。
川上氏の作品は、改行の多い独特の文体で書かれ、独自の世界観が築きあげられています。
また、舞台の緻密な設定や構成は、ゲーム好きをはじめとするファンを惹きつけるフックになっています。
作家デビュー後もゲームクリエイターとして活躍し、ゲーム、ライトノベル、どちらの作品にもファンを獲得している稀有な人物です。
2013年、宝島社の第12回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した八木圭一氏は、会社員として働きながら小説家デビューしました。
受賞作の「一千兆円の身代金」は、ドラマ化されるなど大ヒットしましたが、現在も会社に勤めながら執筆活動を続けられています。
どうして兼業を続けるのか、という質問に対し、八木氏はインタビューの中で、「会社組織に身を置くことで葛藤なども生じ、それも作品作りにつなげられる」と語っています。
いかがだったでしょうか。
大鐘氏は今も医療への情熱を失うことなく「僻地医療」に積極的に携わり医師としての活動を続けています。
また、川上氏には、「先生」と呼ばれることを嫌がるという逸話があります。
ひとつの肩書きにとらわれず活動したいという川上氏の思いが垣間見えるエピソードです。
作家以外の職業への情熱が、作品の魅力を高めたり、ファンを惹きつけたりするのかもしれません。
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