昨今、テレビドラマや映画作品において、「あの小説/漫画が実写化!」という宣伝文句をよく目にします。
映画最大手である東宝の2013年公開作のうち7割が小説・漫画原作という結果からも、現在の映像市場に「原作ありき」の風潮が強く見られることがわかります。
1960~70年代は作家と映画会社が直接に結びつき、その作家が新作を発表するたびに映画化されるという、出版前から映画化構想が練られている状況でした。
角川映画の掲げた「読んでから観るか、観てから読むか」というキャッチフレーズは、出版業界と映像業界が手を組んでいたこの時代を象徴しているといえます。
刊行された時点で映画化が決まっていた時代から、大賞受賞作や過去に出版されたものなど作品単体に目が向けられるという流れに変化した結果、話題性や社会的流行に繋がりやすいものが映像化されるようになりました。
この要因としては、一人の作家の作品を網羅的に読むファンよりも、「話題になっているから」と作品を買い求める読者が増えたからではないかと考えられています。
特に本屋大賞受賞作は社会的流行に繋がりやすく、映像会社が最も獲得したい原作であるため、過去受賞作のほとんどが映像化されています。
文字を主体とする文化の小説と、視覚を主体とする文化の映像。
この二つが融合することはないかと思われますが、年々メディアミックスが増加傾向にあるのは事実です。
出版社側からすれば、過去の作品であっても映像化が話題となり再度の売上げ増加が見込めます。
映像会社側からしてみれば、公開までの売上げ部数の伸びがそのまま宣伝になりますし、一定の集客が見込めるという安定感があるのです。
原作を気に入っていたのに、いざ映像化されたものを見てがっかり……かと思えば、映像ならではの良さが加わるということもあり、原作ファンからすると複雑な気分になることもしばしば。
そんなときには、あえて原作と異なる点を探すという楽しみ方もあります。
書籍を手に、テレビやスクリーンの前にスタンバイするのも悪くないのではないでしょうか。
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