「書誌学」という言葉をご存じでしょうか?
文学研究といえば、著者の意図や物語の構造について考察するイメージが強いと思いますが、それに対して書籍そのものを研究するのが「書誌学」という学問です。
書誌学では、紙や印刷方法、フォントや挿絵、装丁など、書籍を構成するさまざまな要素を研究します。
本コラムで、そんな書誌学の入門書をご紹介します。
私たちは、いま手にしている書物の、「物」としての素材や形態の変化について、どれだけ知っているだろうか。
パピルスからろう板、羊皮紙から抄紙への歴史。巻子本からコデックス、革装本へと進化した製本術。花切れ、天金や小口の装飾、見返しなど、本を成立させる各部の起源と変遷を、製本と装丁の本場、パリで学んだ著者が辿る。西洋の書物史のすべてがわかる、愛書家垂涎の一冊。
副題に書かれた「ロゼッタ・ストーン」とは、紀元前196年にプトレマイオス5世が出した勅令が刻まれた石碑の一部であり、モロッコ革の本は美しい装丁が現代でも人気の書籍です。
ロゼッタ・ストーンが「書物」と呼べるかはわかりませんが、文字を石に刻むほかなかった時代から大量印刷が可能になる現代までには、書籍製作技術の長く複雑な変遷の歴史がありました。
本書では、西洋の書物工房の歴史から、製本技術の発展史を追うことができます。
過去三千年にわたって,文字,紙,印刷術を発明し,書物を生み出してきた人間精神の営為を探ね,人類に知識と思想,夢と力をあたえてきた書物の歴史をあとづける。
著者のプレッサー氏は、ベルリン、ボン、ハイデルベルクの大学でドイツ文学、美術史、哲学、図書館学を学んだ後、マインツ大学でグラフィック、書籍装画、印刷、製本等々にわたる書誌学を研究した人物です。
本書では、書物の歴史を包括的に解説するだけでなく、法令・特許状・序文・手紙・公証書・手引きといった類も、書物の一部と考え紹介しています。
他の書誌学の研究書と比べてもマニアックな書籍史を学ぶことができます。
最も重要な「芸術」を問われたなら「美しい家」と答えよう、その次に重要なのは「美しい書物」と答えよう―。19世紀末イギリスの装飾芸術家ウィリアム・モリスは、晩年、私家版印刷所ケルムスコット・プレスを設立する。そこでは活字や装飾デザインから紙作りに至るまで、徹底した理想の書物づくりが追究された。本書は、書物芸術を論じたモリスの全エッセイ・講演記録を収録したものである。産業化社会の中で、美の探究に心血を注いだ「近代デザインの祖」による、理念と情熱が結露した一冊。
装飾芸術家や、社会主義活動家としても有名なウィリアム・モリスは、晩年に私家版印刷所ケルムスコット・プレスを設立しており、書籍に対して並々ならぬ情熱を注いでいました。
活字や装飾デザインから紙作りに至るまで、徹底した理想の書物づくりを追究したモリスの、熱いこだわりの詰まったエッセイ・講演集です。
以上、3冊をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
気になる書籍があったら、是非手にとってみてください。
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