子どものころ、誰もが一度は物語の世界に憧れたはず。
『不思議の国のアリス』や『ナルニア国物語』『赤毛のアン』など、魅力的な世界観とキャラクターたちに惹かれて、何度も読みふけったのではないでしょうか。
お子さんやお孫さんにそんな作品を書いてあげられたら素敵ですよね。
そこで本コラムでは、児童文学を執筆する際の三つのポイントをご紹介します。
作品のテーマ設定には充分に気を配りましょう。
大人向けの難解な小説作品であっても、児童文学であっても、最も重要なことはただ一つ。
筆者が何を伝えたいか、ということです。
読者である子どもがあなたの作品を読むことで、どのような学びを得て、どのような人物へと育ってほしいか──そんな願いをテーマに託すのが良いでしょう。
もちろん、きれいごとばかりが児童文学のテーマではありません。
成長の過程を歩む不安定な心にそっと寄り添うために、誰もが抱く劣等感や嫉妬心などを描くのもおすすめです。
子どものころは不思議に感じていたのに、大人になるにつれて当たり前になってしまったことは山ほどあるでしょう。
「なぜ空は青いのだろう」「なぜ夜になると暗くなるのだろう」といった科学的な気付き。
「なぜお菓子ばかり食べてはだめで、ピーマンを食べなければいけないのだろう」「なぜお母さんやお父さんはぼくのことを怒るのだろう」といった、ちょっとわがままな不満。
児童文学では、こうした子ども目線の考えをふんだんに取り入れるべきです。
「子どもを叱るのは教育のためだから仕方がない」ではなく、叱られた子どもの不満や悲しみにとことん寄り添ってあげるべきです。
彼らの素直な疑問から逃げず、同じ立場になって考えてくれる作品を書けば、子どもたちも自然とページをめくってくれるはずです。
言葉づかいも、ときに詩的でさえある子どもの感性を見習いましょう。
ライターのモチコさんによる「モチコの親バカ&ツッコミ育児」では、強いショックを受けた様子を娘さんが「あいがばきってなる(愛がバキッてなる)」と表現した様子が描かれています。
ハートがパリーンと割れてしまうイメージを子どもが表現すると、こんなにも微笑ましい言葉になるんですね。
児童文学を書く際は、当たり前に眺めている世界を、初めて目にしたときの気持ちで見つめてみましょう。
繰り返しになりますが、児童文学ではあらゆることを子どもの目線に寄り添って決定するべきです。
立派な大人に育ってほしい、という大人側の都合が大きくなるあまり、公明正大なキャラクターしか出てこない作品になってしまっては、子どもは振り向いてくれないでしょう。
ご自身の幼少期を思い返していただければお分かりのとおり、子どもはときにワガママで、ちょっぴり嘘つきで、見栄っ張りで負けず嫌いです。
子どもならではの残酷さだってあります。
児童文学を書くうえで、これらの要素を無視することはできません。
そんなキャラクターを書いて、作品が魅力的になるのか心配する方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここで実際の子どもたちに目を向けてみましょう。
ワガママで嘘つきで見栄っ張りで負けず嫌いで、しかしそれでいてどこか憎めない彼ら/彼女らの姿が目に入るはずです。
また、子どもたちがもつ未熟さを完璧に克服した大人が、果たしてどれほどいるでしょうか。
児童文学では、あえて登場人物の欠点を強調して書くことも時には有効です。
最後に、本コラムでご紹介した内容をおさらいしましょう。
・子どもの未来を考えたテーマ設定にする。きれいごとばかりが児童文学ではない。
・子どもの目線で執筆する。初めて世界を見たとき、どんなふうに感じていたか思い出そう。
・子どものもつ欠点を、むしろ積極的にキャラクターに投影しよう。未熟であればあるほど、愛おしいキャラクターになる。
児童文学を書く際に最も注意するべきなのが、読者である子どもを決して侮ってはいけない、ということです。
大人にとって面白くない作品は、子どもにとっても面白くありません。
子どもの目線に立つということと、作品としてのクオリティを落とすということを混同しないようにしましょう。
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