2016年4月から6月までTBS系列で放送されたテレビドラマ『重版出来!』の影響から、「重版」という言葉をよく耳にするようになりました。
本コラムでは、「重版」とは何か、なぜ重版がおめでたいのか、重版するためには何が必要なのかを解説します。
「重版」とは、既に出版された書籍をふたたび増刷することです。
重刻(じゅうこく)や再販(さいはん)ということもあります。
重版は、最初の印刷部数をすべて売り切ってしまった場合や、売り上げが充分に見込める売れ行きである場合に検討されます。
とはいえ重版は、そう簡単に決まるわけではありません。
重版をしても見込みより書籍が売れなかった場合、出版社は多くの在庫を抱えることになるからです。
そのため出版社は、非常に慎重に重版の決定を行います。
書店に欲しい本がなかったため書店員に問い合わせたところ、「入荷できない」と言われたことはないでしょうか。
この場合、絶版しているという可能性も考えられますが、絶版ではないのに入荷できない場合もあります。
一体なぜでしょうか。
この謎を解く鍵は、書籍販売の仕組みである「委託販売制度」に隠されています。
皆さまもご存知のとおり、書籍は書店で販売されるものであり、出版社が直接販売しているわけではありません。
出版社は、書籍の販売を書店に委託しているのです。
この委託販売制度のもとでは、書店は出版社から書籍を一旦「お預かり」しているだけなので、書店で売れなかった書籍は、本来の持ち主である出版社へと返品されます。
つまり、倉庫に保管されているものだけでなく、書店に陳列されて買い手を待っている書籍もまた、出版社の抱える在庫であるということです。
さて、ある書店で売り切れていた本を、別の書店では購入できた、ということはしばしばあります。
出版社の側から見れば、まだ書籍を書店に預けている──つまり在庫を抱えている──ということです。
したがって、一つの書店で売り切れても、他の書店に在庫が多く残っているなら、重版という選択肢はほぼありません。
出版社は、売れていない書店からの返品がなければ他の書店には在庫を回すことができなくなり、いわば八方塞がりになってしまうのです。
そのため重版がかかるには、全国の書店で満遍なく売れる必要があるといえます。
出版社が重版に対して慎重になるのには、こういった理由も潜んでいます。
単に重版することが目的なら、初版を少ない部数にしたらいいのでは?という疑問もあるかもしれません。
しかし、少ない部数で流通すると、それだけ読者の目に触れる機会も少なくなります。
したがって、自然と売れる数も減ってきます。
つまり、書籍の部数は多すぎても少なすぎてもいけないということです。
その書籍にとってベストな流通部数を提案し、売れ行きが見込める書店にピンポイントで配本することで、重版の可能性が開かれます。
したがって、部数や配本先の設定もまた、出版社の重要な使命となります。
重版が決定した書籍は、新聞の広告や書店のポップで大きく報じられます。
これまでは何気なく目にしていたそうした報道の裏に、著者と出版社の一人でも多くの人に感動と驚きを届けたいという想いを感じ取っていただければ幸いです。
>おすすめ記事:自費出版を成功に導くためには【具体例付】/自費出版講座**
幻冬舎ルネッサンス新社では、本を作る楽しみを自費出版という形でお手伝いしております。
原稿応募、出版の相談、お問い合わせ、資料請求まで、お気軽にご連絡ください。
お問い合わせいただきましたら、担当の編集者がご対応いたします。
原稿内容やご要望に沿ったご提案やお見積もりをご提示いたします。
幻冬舎グループ特約店(150法人3,500書店)を中心とした全国書店への流通展開を行います。