出版後、テレビドラマ化が決定
「小説の魅力は人間の弱さや脆さを描くこと。」
瀬野恭子は、誰もが羨むような美貌と知性を兼ね備えた、裕福な家庭の主婦。何不自由なく生活する彼女に、ある日一本の電話がかかってきた。その瞬間から、突如として彼女の心に殺意が芽生え……
女の意地と虚栄が作り上げた完全犯罪に、ベテラン刑事の戸田克巳が挑む。息詰まる心理合戦が繰り広げられる、本格ミステリー。
2006年8月に、幻冬舎ルネッサンスから初めての長編小説「氷の華」を出版。刊行して数ヵ月の間に、「氷の華」は数社の制作会社からテレビドラマ化の打診が持ちかけられる大反響。2008年にはテレビ朝日開局50周年スペシャルドラマとして放送されました。
「小説を書いたのは初めてで、文章作法といったことも分かりません」とおっしゃっていた天野さん。執筆の苦労と今後の抱負について伺いました。
小説を書こうと思ったきっかけは?
天野 小説を読むのが大好きで、これまで長編、短編、洋の東西を問わず1000作品近くを読破してきました。その中から一冊を選び出せといわれたら、
読書を通じて分かってきたことは、小説とは人間が人間を描くものであり、しかも、人間の弱い部分を描かざるを得ないということです。
推理小説で描かれる世界では、何らかの事件が起きます。その事件が起こる背景にある人間の脆さ、弱さ、事件を起こさなければならない動機を描くことに、推理小説を書く醍醐味があると知ったのが、そもそものきっかけです。
タイトルに込めた天野さんの想いは?
天野 「氷の華」の氷と華は、主人公の瀬野恭子そのものです。「氷」
恭子は、プライドが高く、
作品を執筆する際には、どんなことに気をつけましたか?
天野 多くの推理小説の場合、
そこで、私の場合は、
この手法を採ったことで、読者を「
読者が途中で挫折するかもしれない。そうさせないために、
さらに、私は作品を執筆する際、
「氷の華」の主人公の殺意は決して計画的ではなく、
私は普段から男と女の単なる愛情を表現することにはあまり興味が
天野さんの文章は、とても読みやすくテンポがあります。これまで文章教室などに通ったことはありますか?
天野 文章教室の類いには通ったことはありませんが、仕事柄、
そして、これまで数多くの作品を読んできましたので、
創作活動は順調に進んだのですか?
天野 この作品はのべ4年がかりで執筆したのですが、
日中は仕事をしておりますので、平日は夜の2時間から3時間程度
まず、緻密に枠組みを作ってから、書き始めました。
また、途中で半年くらい書けない時期がありました。執筆開始から
文章を推敲する作業は大変でしたか。
天野 この作品に費やした枚数は、400字詰め原稿用紙に換算すると1
読み手のことを考えますと、たくさんの情報を盛り込み過ぎると、
「もったいないけど、今回は捨てよう」
読者の反響はいかがでしたか。
天野 450ページ超の分厚い本ですので、
一番うれしかった言葉は、ある読者からいただいたハガキに「
ご著書が書店に並んでいるのを見たときの印象は、どうお感じになりましたか。
天野 感無量の一言に尽きます。
そして、「よくやったじゃない」と自分を褒めました。60歳まで
今後の創作活動について、教えてください。
天野 書籍が完成してしばらくの間、「氷の華」
最後にメッセージをお願いします。
天野 会社などを退職した後の第2の人生を、書くことに費やすというのは大変素晴らしいと思います。小説を書くことは空想の世界を描くことであり、空想は楽しいものです。ものを書くというのは、脳の活性化にもつながりますしね。
60代前半は、まだまだエネルギーがたくさんあり、干上がってしまうには早すぎる年代です。若者でもなく、ギラギラと欲望に満ちて脂ぎった年代でもなく、70歳の老人とも違う、独特の年代だと思います。団塊の世代は、洗練された世代、酸いも甘いも噛み分けた、生き方のセンスが求められる世代とも言えるでしょう。私もこの歳になって作品が初めて世に出たという事はとっても大きな喜びであり、驚きでした。我が子を旅立たせた親のような気持ちと、作品を評価されますと、子供を誉められる親の気持ちってこういう事かと判りました。書き終えてホッとする反面、新たなる意欲も沸いてきましたし、書く事で毎日が楽しくなりましたし、これからの生活に希望と張りが出たのも確かです。
ですから私と同じ世代の方々が、さらに自分をステップアップさせるためにも、ぜひ書くこと、作品を創ることを始めてみてはいかがでしょうか。
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