第2回 風を切るように、読み進められる文章。
(『仕事にやりがいを感じている人の 働き方、考え方、生き方。』の著者によるコラムです)
拙著『仕事にやりがいを感じている人の働き方、考え方、生き方。』に対して「文章が読みやすい」との評価を非常に多く頂戴する。「読みやすさ」を意識して書いた僕にとって、最高に喜ばしい評価だ。みなさま、ありがとうございます。
本書では、短文を意識的に多用している。抑揚のない(「~た。」で終わる)短文の連続性で全体を構成している。ちょっと気取って言うならば、小気味よい“リズム”とまっすぐに読み進められる“スピード”を意識したつもりである。
ややもすると単調になりがちな文体に対して、制作の過程で疑問出しをいただいたが、僕は構わず押し通した。僕が考える「読みやすさ」を実現したかったからである。とはいえ、自信があったわけではない。出版後、多くの方から「読みやすい」と言っていただき、本当に救われる想いがした。
個人的には、晦渋な文章のほうが好きである。文章に異物のような抵抗感があるものを、若い頃から耽読してきた。今回は、好みとは正反対の文体を採用した。その背景には、読者の存在がある。
本書において設定した主たる読者層は「年齢は20代、仕事に対して意識が低く、そもそもビジネス書なんてぜんぜん読まない人」だ。ビジネス書としては、かなり無謀はターゲット設定だろうが、手に取っていただけることを僕は信じた(特に根拠はありません)。しかし、読んでいただけたとしても、文章に異物のような抵抗感があったら、すぐに本を閉じてしまうだろうと思った。そこで、自分の好きな文体ではなく、「そもそもビジネス書なんてぜんぜん読まない人」でも楽に読める文体で書こう、と考えたわけである。
風を切るように読み進められる文章。僕は、それを目指した。
とはいえ、なかなか難儀であった。文章を書いていると、前回のコラムで書いたトランス状態になり、文体が、抵抗感があるゴツゴツしたほうへ引っ張られていくのだ。そんな自我を、「そもそもビジネス書なんてぜんぜん読まない人」を意識することで制しながら、「読みやすさ」を保っていった。「読みやすい」と言っていただけたので及第点をつけられるとは思うが(自己評価)、一方で、文章に独特の“粘り”が残っているようで少し気持ち悪い……とも思っている。
ちなみに、普段のライター稼業では、同様な状況に陥ることがない。難なく抵抗感のない文章が書ける。謎。本を書くって、やはり、何かが違うんでしょうね。
■著者紹介
『仕事にやりがいを感じている人の 働き方、考え方、生き方。』(毛利大一郎・著)
株式会社R4 クリエイティブディレクター/ライター
1974年 愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学 第一文学部卒。2006年、企業の人材採用・教育に関わる各種サービスを展開する株式会社R4に入社。以来、数多くの求人広告・企業広告の制作に携わる他、パンフレットや映像の企画・制作、企業理念の作成・ブランディングなどを行う。2014年より同社制作部 事業部長。