ミステリー小説の「トリック」と「魅力」のつくりかた
「ミステリー小説を書いてみたい」──そう考えたことのある方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
読むのは楽しいミステリー作品ですが、書くとなると難しそうですよね。
「自分にはミステリー小説なんて書けない……」「動機、トリックが思いつかない」と諦めてしまっていませんか?
そこで本記事では、ミステリーにおいて最も重要な、トリックと動機を書く際の考え方をご紹介します。
ミステリー小説におけるトリックの考え方
手品のトリックとミステリーのトリックは、観衆・読者を巧みに欺くという点でよく似ています。
例えば、コインを手の中に入れたはずなのに、合図をすると胸ポケットの中から出てくるマジック。
観客は「どうコインを移動させたのか」に注目します。
しかし本当に重要なのは「いつコインを移動させたのか」ということ。
実は、手の中に入れるより前に、コインは胸ポケットにこっそり入れられているのです。
ミステリーでも似たような例が挙げられます。
誰もいなかったはずの密室のドアをこじ開けると、そこには死体が転がっている、という場面を考えてみましょう。
この場合、読者の意識は「どうやって密室状態の部屋に死体を持ち込んだのか」という点に集中します。
ミステリーでは、ここを目指して読者を誘導する必要があります。
しかし実際はここでも、謎はむしろ「いつ密室状態の部屋に死体を持ち込んだのか」という点にあります。
例えば「最初に発見された死体はダミーで、第一発見者が驚いて部屋から逃げ出した後、鍵の開いた部屋に本物の死体が運び込まれた」などが考えられます。
したがって、「死体が運び込まれたときにはそもそも密室などなかった」というのが正しい表現ということになります。
つまり、謎の焦点とトリックをずらすことが、読者を欺くポイントになるのです。
これにより、真相を知った読者を驚かせ、ミステリー小説全体の質を上げることができます。
ミステリー小説における動機の考え方
続いては動機について考えてみましょう。
物語を読んでいて、意外な人物が犯人であったことが明かされ、驚いた経験を持ったことは多いでしょう。
なぜその犯人を意外だと感じたのか振り返ってみると、動機が意外だったということに気付きます。
では、意外な動機を考えるにはどうすればよいのでしょう。
ここでは2つのパターンをご紹介します。
① 動機自体はごく普通だが、それが隠されている
動機自体はごく普通ですが、それが背景や人間関係に隠蔽されているパターンです。
後から事情が明らかになったことで、読者は納得感を得ることができます。
重要な部分は意図的に隠しつつ、真実のヒントを散りばめるのが良いでしょう。
② 動機自体がそもそも異常で、予想もできない
常人には理解できない動機で犯行が行われているパターンです。
この場合、いかに読者に納得させるかということがポイントとなります。
「犯人の思考が垣間見える伏線」と「その考え方が一貫している」ことが肝心です。
罠をしかけて読者をミスリードする
物語を読んでいると「怪しい」と思わせる人物が登場します。
この人物は、作者が読者を騙すために用意された罠であることがほとんどです。
このように、人を誤った結論に導くことを「ミスリード」と呼び、ミステリ作品では非常に重要な要素となります。
また犯人として疑われる人物は、その不審な挙動に実はその行動には別の理由があった──という展開にすることで、伏線の回収にも使いやすくなります。
最後に
本記事ではミステリー小説におけるトリックと動機の考え方をご紹介しました。
トリックと動機を考えるのは簡単ではありませんが、まず枠組みを立ててから肉付けすることで幅が広がります。
ぜひ挑戦してみてください。