自費出版本は書店に並ぶのか? 流通の仕組みを把握し、売上を伸ばす販売ルートを知ろう|本の流通講座
自費出版した本を販売する際には、さまざまな販売ルートを検討するのではないでしょうか。
これまでは書店販売が一般的でしたが、コンビニや生協、売店といった店舗販売。イベントに持ち込んで直販する。インターネット(本の通販サイトや電子書籍サイト)で販売するなど、今ではたくさんの販売ルートがありますね。
そこで今回は、そうしたそもそも本が書店へと流通される仕組みはどのようになっているのか、そうした販売ルートの中で最も人気なものは何かをお伝えするとともに、また、人気ルートで販売数を伸ばすにはどうしたら良いのかを考察していきます。
本が書店に流通されても、販売されるわけではない
著者が出版する本は印刷会社にて形となり、全国の書店へ届けられます。出版社がどこの書店に何冊搬入するのかといった配本戦略を事前に立て、取次によって書店へ搬入されるのが一般的な流通の仕組みです。
搬入された本は未だ書店には並びません。書店員の方が、様々な出版社から届いた多くの書籍のうち、どれを書棚に並べるかを決めるのです。もちろん書店は売れる本を販売したいので、売れそうな本を選びます。2015年の年間刊行点数は80,048冊(「出版年鑑」ベース)でした。一度も書棚に並ばない書籍も中にはあるのです。
よって、流通が確約されている出版社から刊行された自費出版本は、商業出版と同様に流通されることが分かりました。しかし、自費出版本も商業出版と同様に、書店員による目利きによるふるいにかけられるのです。
そこで注目すべきは出版社と書店が結ぶ特約店契約の有無です。特約店契約とは出版社が書店との間で結ぶ、「新刊を必ず書店販売する」という取り決めです。弊社も全国主要書店4,000店舗以上と特約店契約を結んでいます。流通された本が販売されることも約束しているのです。
自費出版本を書店へ流通させ、販売したい、という場合は出版社が①流通の仕組みを持っているのか②特約店契約を結んでいるのか③取次・書店と良好な関係性を築けているのか、この3点を確認することが必要です。
販売ルートは書店ルートが不動の1位。自費出版はインターネットも好調
流通と販売の仕組みを抑えたところで、次は販売ルートについて紹介します。
まずは人気の販売ルート6つ(書店ルート、コンビニルート、インターネットルート、生協ルート、駅販売ルート、スタンドルート)を比較してみましょう。
(出典:ガベージニュース『販売ルート別推定出版物販売額(2010-2014度年)(億円)(電子出版追加版)
』)
販売ルート別推定出版物販売額(2010-2014年度年)の資料によると、総額16,099億円のうち約70%の11,638億円が書店ルートで占められています。
以降はコンビニ、インターネットが各10%弱となっています。コンビニは店舗数の多さが販売額に比例しているようですが、インターネットはここ数年で販売額が急増しているルートです。比率だけ見ると書店に対しては大きく劣りますが、シェアだけでみるとコンビニルートに並ぶ規模となっており、成長の勢いを感じますね。
インターネットでの販売も1つの選択肢だが・・・
次に、インターネットルートの詳細を見てみましょう。
(出典:ガベージニュース『電子出版市場規模推移』)
2014年度までの電子出版市場規模推移では、スマートフォン・タブレット向けの電子市場が徐々に拡大し、2014年時点では電子書籍が圧倒的なシェアを誇っています。本を出版し販売数を伸ばす上では、電子書籍という出版方法は無視できない選択誌となってきているようです。
しかし、それだけ成長市場であるという事は、電子書籍の出版を検討している企業や個人は無数に存在するという事になります。
また、インターネットが普及しているとはいえ、年齢によっては電子書籍に対するリテラシーの低さも見られますから、販売数において過度な期待はできないでしょう。
自費出版したら、必ず配本したい人気書店は?
さて、次は書店ルートでの販売について、詳しく見ていきましょう。
書店で自費出版本を販売するとなると、1番気になるのは「人気書店に配本されるのか」ということではないでしょうか。
人口数の多い都道府県にある、駅から近いといった立地条件はもちろん、有名なチェーン店や大規模な売り場を持っているなど・・・いろいろな希望が浮かんでくるかとは思いますが、まずは売上額の高い書店(=本がたくさん売れる書店)を押さえましょう。
東洋経済新報社が発表した『書店の法人別 売上げランキング 2013年度』によると、売上額TOP20の書店は以下のとおりです。
1,紀伊國屋書店
2,ジュンク堂書店
3,丸善書店
4,くまざわ書店
5,三省堂書店
6,ブックファースト
7,文教堂書店
8,有隣堂
9,TSUTAYA
10,八重洲ブックセンター
11,未来屋書店
12,リブロ
13,あおい書店
14,宮脇書店
15,啓文堂書店
16,旭屋書店
17,喜久屋書店
18,大垣書店
19,トップカルチャー
20,三洋堂書店
(出典:日本著者販促センター『東洋経済新報社 発表 書店の法人別 売上げランキング 2013年度』)
以上の結果が出ています。
特に1位・2位の差は大きく、紀伊國屋書店の販売数は114,669冊、ジュンク堂書店は85,660冊となっており、圧倒的な差が生まれています。
また、上位にランクインしている書店は店舗数はもちろん、駅中や駅チカといった有利な立地条件にある書店がほとんどです。
もしも自費出版本を流通させるのであれば、TOP5以内の書店には必ず配本してほしいものですね。
“いま”人気の書店に注目!自費出版の配本先にも!
さらに、ランキング内で伸長率110%以上を記録しているのが、TSUTAYAとトップカルチャー(蔦谷書店)です。
同社は従来の書店には無い機能の追加、陳列・販売方法の工夫など様々な仕掛けを行い、メディアでも取り上げられていました。
こうした今話題の書店に配本されることも、本の販売数を伸ばしたい著者にとっては注視すべきポイントではないでしょうか。
自費出版で絶対置きたい!本が売れるエリアを確認しよう
では、店舗別の結果も見てみましょう。
1,丸善 丸の内本店
2,紀伊国屋書店 新宿本店
3,紀伊国屋書店 梅田本店
4,丸善書店 日本橋店
5,ジュンク堂書店 池袋本店
6,八重洲ブックセンター 本店
7,紀伊国屋書店 新宿南店
8,三省堂書店 神保町本店
9,文教堂書店 浜松町店
10,三省堂書店 有楽町店
(出典:日本著者販促センター東洋経済新報社 発表 書店の単店別 売上げランキング 2013年度)
最寄駅が東京・新宿・池袋・梅田といった利用者の多い駅付近の店舗が集中していますね。また、三省堂書店 神保町本店がランクインしているとおり、千代田区にはたくさんの書店があり、本好きの読者にとっても人気の地域です。
本の販売数を伸ばす上でこうした書店に配本されることは大前提ですが、土地柄によっては売れやすいジャンル・売れにくいジャンルというものがあります。例えば、オフィスが多い丸の内周辺でビジネス書を売るのと、絵本を売るのとでは結果は一目瞭然です。
単に人気書店に配本するだけではなく、ターゲットとなる読者が利用する書店を分析し、戦略的な配本を行うことも重要ですね。
以上、流通経路は出版社によっても違いがあり、配本ルートの決め方にもいろいろな方法がありますから、より効率的な配本を目指すのであれば、出版社などその道のプロに相談してみましょう。