大賞作品
電子書籍化
大人向けの部
『まきもどして』すずはらちとせ:著
【大賞作品 幻冬舎より電子書籍化】
■著者紹介
『まきもどして』
(すずはらちとせ・著)
大きぜんまいが付いたロボットが歩いている。最初は緑あふれる美しい風景だが、歩みを進めるたび、濁った空の汚らしい風景に変わっていく。彼がたどり着いた先は、ゴミのあふれた真っ暗な場所。そこで彼は歩みを止め、空を見上げる。文字を使用せず、絵だけでメッセージを伝える作品。
大賞作品『まきもどして』
編集者講評
動けなくなったロボットのぜんまいを『巻き戻して』ほしいという願いと、汚染された自然を『元に戻してほしい』という願い、二つの願いが込められた、メッセージ性の高い作品です。
環境汚染された自然は簡単に『巻き戻す』ことはできない。本作の最後のページは、もう引き返せない、つまり『巻き戻せない』段階になる前に環境に目を向けるよう、読者に切実に訴えかけています。
文字が一切使われていないからこそ、本作の絵は言葉以上に雄弁にメッセージを伝える。切れ味鋭い社会風刺をはらんだ傑作です。
子供向けの部
『ひつじのモフさん
しあわせ みーつけたっ』よこえしおり:著
【大賞作品 幻冬舎より電子書籍化】
■著者紹介
『ひつじのモフさん しあわせ みーつけたっ』
(よこえしおり・著)
どうぶつ達の暮らす世界に冬がやってきた。主人公の「ひつじのモフさん」は、寒さに震えるどうぶつ達にあみものの衣服を与え、ちいさな「しあわせ」を与えていく。しかし、いつのまにかモフさんの豊かな体毛は失われ、ガクガクと震え始める。実はモフさんは、自分の体毛を使ってあみものをしていたのです。
そんな時、あみものでちいさな「しあわせ」を受け取ったどうぶつ達が、モフさんを優しく抱きしめる。こうしてモフさんは心も体もあたたかく温められたのだった。
大賞作品『ひつじのモフさん しあわせ みーつけたっ』
編集者講評
オスカー・ワイルドの「幸せの王子」のように、自己犠牲で周囲の人間を幸せにしていく物語。「幸せの王子」は自己犠牲の果てに王子の像は朽ち、ツバメは命を落としますが、本作は違います。
自己を犠牲にして他人に施しを与えることにより、施しを受けた者から逆に助けを受ける。そんな善意のループを描いた作品です。
優しいタッチで描かれたイラストも作風にマッチしています。暖かみのある色彩は、読者の心までホッと暖めてくれることでしょう。