大賞作品
電子書籍化
『Birth Day』吉田 吉太郎:著
【大賞作品 幻冬舎より電子書籍化】
『Birth Day』
(吉田 吉太郎・著)
■あらすじ
大学を卒業して5年。塾講師で働く浩介に、学生時代の友人から電話がかかってくる。当時一緒にバンドを組んでいた仲間たちと同窓会をしようというのだ。成り行きで参加することになるものの、彼には気乗りしない理由があった。
かつてのバンドメンバーであり、浩介の恋人、洋子。彼女を襲った悲劇的な出来事は、浩介の心に深い傷をつけ、バンドも解散することになる。
その事件以来、建築家の夢を諦め、楽器にも触れなくなった浩介だったが、同窓会で彼らと再会してから、止まった時間が少しずつ時を刻み始める……。
失った夢を再び取り戻す、再生の物語。
大賞作品『Birth Day』
編集者講評
挫折と再起。普遍的な青春小説のテーマを爽やかに描ききった傑作です。
若い頃に一緒になって夢を追っていた仲間と再会した時、スーツ姿で髪を整えた姿にどこか寂しい想いをした事のある方も多いのではないでしょうか。変わった部分へのとまどいと、変わらない部分への安堵。この揺れる感情がよく描けています。
楽器を演奏するシーンの演出が非常に上手く、頭の中にメロディーが流れてくるような臨場感があります。特に、終盤のライブシーンの盛り上がりは極上です。そしてライブシーンから流れるように繋がるラストの場面。主人公の苦悩を丁寧に描いているからこそ、ラストシーンのカタルシスが映えるのです。
登場人物の人格がよく描けているので、それぞれの関係性が生むドラマに読者がぐいぐいと引き込まれていきます。それぞれの思惑が一本の線になり、主人公の再起に繋がる構成は、青春小説として理想的なものと言えるでしょう。