幻冬舎ルネッサンス新人賞

大賞作品電子書籍化

大賞

『猿男』

南口昌平:著

【大賞作品 幻冬舎より電子書籍化】

『猿男』
(南口昌平・著)


■あらすじ
自堕落な生活を送る主人公は、ある日職場の上司から「おまえは猿以下だ」と馬鹿にされる。やけ酒を飲んだ帰り道、「仙人」を名乗る男を助けたことにより、お礼として主人公は人間と同じように喋れるニホンザルに変身させられる。
それから主人公は「猿男(さるお)」と名乗り、言葉を喋る天才猿として有名になっていく。
その後猿男はテレビ番組の司会に抜擢されたり、映画に出演するなど、あっというまに人気者になる。
ある日猿男が健康保険に加入できないと知った人間たちが、猿男にも人権を与えるよう運動を始める。政府は猿権法という法律を作り、晴れて猿男は人権を有する日本国民になる。
猿男は「人間」として大学に入学し、面白半分で同級生の恋愛を応援し、成就させる。
それに触発され、以前から恋心を抱いていた仕事仲間のアナウンサーに告白するが、猿であることを理由に振られ、愛よりも力を欲するようになる。
都知事選に立候補した猿男の前に再び仙人が現れ、「今までの成功はまじないのおかげで、それが切れるから人間に戻れ」と進言するが、猿男はそれを断る。
まじないが切れると、世間はくるりと手のひらを返し、猿男は破滅していくことになる。

大賞作品『猿男』
編集者講評

下平 駿也

社会に対する皮肉を込めた寓話。強烈な毒が上質なユーモアに包まれた、極上の不条理エンターテイメント劇です。人間では半人前でも、猿であれば天才なのではないか、という発想は、ジョークの中に問題提起や社会批判を入れ込むイギリスのコメディを思わせます。荒唐無稽な設定でありながら、深い知識に裏打ちされた細やかなディティールにより、物語に説得力が生まれ、読者が感情移入しやすくなっています。
本作のレベルをぐっと引き上げているのは、大学編の存在でしょう。大筋としては、猿男の栄達と転落があれば物語は成り立ちます。しかし、このシークエンスがあるからこそ、物語の質が上がっています。大学編が無ければ、あまりに「分かりやすいプロット」すぎる。著者の意図がどこか透けて見える構成になっていたでしょう。
また、大学編は猿男が猿である必要が一切ありません。猿男を普通の人間に変えたうえでこの部分を切り取っても、短編として十分成立するはずです。 文章力、構成力、テーマ、どれをとっても一級品。楽しく読みながらも考えさせられる、すばらしい作品です。

幻冬舎ルネッサンス新社編集部マネージャー
下平 駿也

審査員

山名 山名 克弥(やまな かつや) 株式会社幻冬舎ルネッサンス新社 代表取締役社長。「プロの読者目線」を信念に、1か月に5~10冊の書籍刊行に携わる。かつては企画営業部に在籍した経験から、書店への流通・販売戦略の立案や、プロモーション戦略面についても熟知し、制作面に拘わらずそれぞれの著者に最適な出版戦略の企画立案を得意とする。趣味は食べ歩き。
佐藤 佐藤 大記(さとう だいき) 株式会社幻冬舎ウェブマ 代表取締役社長。IT企業にてTVCMやモバイル広告をメインとした広告宣伝に従事し、2008年に幻冬舎メディアコンサルティングに入社。顧客のターゲット目線によるコンサルティング力をもとに、 書籍やWEBを活用したブランディングを得意している。 大手上場企業の他、医療法人や個人クリニック、中小企業や学習塾、士業まで 幅広いプロデュース実績がある。
坂本 坂本 洋介(さかもと ようすけ) 株式会社幻冬舎デザインプロ 代表取締役社長。フレグランスメーカーや広告業界にてアートディレクター・デザイナー職を経た後、書籍特有の信頼性に興味を持ち、幻冬舎メディアコンサルティングへ入社。「人の心を動かすデザイン」を信念に、書籍をはじめ、広告やWEB、プロダクトなど、幅広い領域のデザインを手がける。

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