100点をとれない
天才の恋
根本美佐子:著
あらすじ
主人公の上村優は生まれながらの異常な記憶能力のせいで、親や同級生から気味悪がられ、孤独な幼少期を過ごす。勉強は不得意だったが、特殊能力を生かして美術系の専門学校へ進学する。そこで優は、ウィスパーボイスの神秘的な女性城間葉月に出会う。一目で彼女のことを好きになるが、なんと彼女の顔だけ覚えられないことに気が付く。こんな経験、今までになかった。不安と戸惑いから、優の生活は滅茶苦茶になっていく。
はじめての友達、そして恋—―。これは特殊な能力から周囲になじめなかった主人公が、一人の女性に恋をして変わっていく恋愛小説だ。
審査員
山名 克弥
株式会社幻冬舎ルネッサンス新社
代表取締役社長
「プロの読者目線」を信念に、1ヶ月に5~10冊の書籍刊行に携わる。かつては企画営業部に在籍した経験から、書店への流通・販売戦略の立案や、プロモーション戦略面についても熟知し、制作面に拘わらずそれぞれの著者に最適な出版戦略の企画立案を得意とする。
趣味は食べ歩き。
下平 駿也
株式会社幻冬舎ルネッサンス新社
編集部マネージャー
書籍の企画立案はもちろん、出版後の販促やイベントにまで携わることで独自の“売れるノウハウ”を構築。それを余すことなく著者に伝え、売上に妥協しない徹底的な姿勢から、強力な販促アドバイザーとして評価されている。
かつてはビジネス書の販促企画チームに所属しており、企業の代表など権威ある著者からの信頼も厚い。猫好き。
坂本 洋介
株式会社幻冬舎デザインプロ
代表取締役社長
フレグランスメーカーや広告業界にてアートディレクター・デザイナー職を経た後、書籍特有の信頼性に興味を持ち、幻冬舎メディアコンサルティングへ入社。「人の心を動かすデザイン」を信念に、書籍をはじめ、広告やWEB、プロダクトなど、幅広い領域のデザインを手がける。
編集者講評
優が葉月と出会い、恋に落ちていく様子が非常に丁寧に描かれており、作者の表現力に脱帽した。恋愛小説におけるキャラクター同士のやり取りは非常に重要なもので、本作品も中村航の恋愛小説のように読者から愛される作品になるだろう。
また、ふたりの甘酸っぱいやり取りと、葉月の顔が思い出せず悩むシーンの差が見事に表現されていた。展開の緩急によって、読者はより深く物語の世界に引き込まれることだろう。
物語の最後、優は天才という鎧を脱ぎ捨て、葉月と共に生きることを選ぶ。ただの恋愛小説ではなく、主人公の成長を感じさせられる結末だった。
物語としての魅力に溢れており、応募作品の中で頭ひとつ抜けた秀作であった。