門をくぐる
横山雄悟:著
あらすじ
医師として生計を立てていた篠原諫は、気が付くと見知らぬ男と舟に乗っていた。男の名前は庄兵衛。彼は暗闇と同化してしまうほどの真っ黒な衣装に身を包み、小舟の行く先や篠原がすべきことを淡々と説明する。余命いくばくの身だったはずの篠原は、眼前の光景がおよそ信じられず、激しく動揺する。しかし、川の流れには逆らえず、篠原は長い人生の中で葬り去ったはずの罪の記憶と向き合っていく。すべての記憶を回収したとき、審判が下される。ふたりが乗る舟が行きつく先は天国か、それとも地獄か。現代版『高瀬舟』ともいえる意欲作であった。
審査員
山名 克弥
株式会社幻冬舎ルネッサンス新社
代表取締役社長
「プロの読者目線」を信念に、1ヶ月に5~10冊の書籍刊行に携わる。かつては企画営業部に在籍した経験から、書店への流通・販売戦略の立案や、プロモーション戦略面についても熟知し、制作面に拘わらずそれぞれの著者に最適な出版戦略の企画立案を得意とする。
趣味は食べ歩き。
下平 駿也
株式会社幻冬舎ルネッサンス新社
編集長
書籍の企画立案はもちろん、出版後の販促やイベントにまで携わることで独自の“売れるノウハウ”を構築。それを余すことなく著者に伝え、売上に妥協しない徹底的な姿勢から、強力な販促アドバイザーとして評価されている。
かつてはビジネス書の販促企画チームに所属しており、企業の代表など権威ある著者からの信頼も厚い。猫好き。
坂本 洋介
株式会社幻冬舎デザインプロ
代表取締役社長
フレグランスメーカーや広告業界にてアートディレクター・デザイナー職を経た後、書籍特有の信頼性に興味を持ち、幻冬舎メディアコンサルティングへ入社。「人の心を動かすデザイン」を信念に、書籍をはじめ、広告やWEB、プロダクトなど、幅広い領域のデザインを手がける。
編集者講評
下平 駿也 幻冬舎ルネッサンス新社
編集長
人は決して一人では生きてゆけません。年を経るにつれてだんだんと意固地になっていった篠原は、他者とのつながりを思い出し、赦しを得ることによって人生の終焉を迎えます。家族とのたしかな絆を描いた本作品は、今回のテーマ「命、つながり」に最もふさわしい作品でした。
読み手を作品世界に惹きつけるにあたって、表現力は切っても切り離せない関係にあります。本作は、修辞法をふんだんに活用した語りによって作品の厚みが何重にも増していました。安易で直接的な感情表現を避け、抑揚のある文章を徹底しているところに本作の特筆すべきものがあるでしょう。こういった表現力は応募作品の中でも頭一つ抜きんでていました。
文章表現力、構成力のバランスがとれており、そしてなによりも作品が持つテーマ性が合致していたことが受賞の決め手です。