セカンドライフは「掟破りの刑事の正義」
上川秀男:著
あらすじ
首を絞められ殺害されたにも関わらず、一切苦しんだ跡がない女の死体。捜査にあたる捜査一課の特捜刑事・村井翔真が事件を突き詰めるうちに見えてきた、たった5歳の少女の行動から始まる負の連鎖はどこまで続いていくのか。
すべてを白日の下に晒すことが正義であり私情を挟むことは禁忌とされる業界で揺れ動く1人の刑事を主人公として、罪の意識に苛まれ続けた人間たちの運命が交差し加速する、本格ミステリー小説。
審査員
山名 克弥
株式会社幻冬舎ルネッサンス新社
代表取締役社長
「プロの読者目線」を信念に、1ヶ月に5~10冊の書籍刊行に携わる。かつては企画営業部に在籍した経験から、書店への流通・販売戦略の立案や、プロモーション戦略面についても熟知し、制作面に拘わらずそれぞれの著者に最適な出版戦略の企画立案を得意とする。
趣味は食べ歩き。
小暮 秀和
大学卒業後、スポーツ専門の出版社に勤務。編集者としてキャリアを積んだ後、幻冬舎ルネッサンス新社に入社。小説、エッセイ、ビジネス書から実用書まで、幅広く編集業務にあたっている。
坂本 洋介
株式会社幻冬舎デザインプロ
代表取締役社長
フレグランスメーカーや広告業界にてアートディレクター・デザイナー職を経た後、書籍特有の信頼性に興味を持ち、幻冬舎メディアコンサルティングへ入社。「人の心を動かすデザイン」を信念に、書籍をはじめ、広告やWEB、プロダクトなど、幅広い領域のデザインを手がける。
編集者講評
山名 克弥 幻冬舎ルネッサンス新社
代表取締役社長
現役を退きバーンアウトに見舞われた元刑事が妻の勧めで書いた小説として幕を開け、息つく暇を与えず綴られるストーリー展開には目を奪われました。殺害現場の捜査シーンや警察同士のやり取りにある張りつめた空気など、作者の実体験から生まれるリアリティは何ものにも代え難い臨場感を生み出しています。真理恵の死に潜む真実や翔真の父親の死にまつわる真相など、何かがあると常に予感させながら想像の斜め上を行くストーリーは圧巻でした。
また、サイドストーリーとして彩夏の存在と2人の関係性の変化を盛り込むことで、刑事としてではなく一人の男性としての翔真の姿が浮き彫りとなり、彼と読み手の間にある距離がぐっと近づきます。
ある事件をきっかけに大切な家族を失った人間同士が対峙したときの憎悪と懺悔、後悔を痛切に描くとともに、あえて後味の悪さを残し人間の根幹をまざまざと見せつける圧倒的な存在感に、光るものを感じました。