著者インタビュー

母を知る方々へ、生前よりお気に入りの作品をお配りする事が出来ました。

生まれつき耳が聞こえない「留吉」。一見頼りなげだが頼まれた畑仕事をもくもくとやり、どんどん人々の心を掴んでいく。
そしてそのうちにあるひとつの「夢」を抱くようになる――。
笑顔を見せるたびに光る金歯に込められた切ない願いや、辛くても人一倍明るく生きる留吉の思いとは?
実在の人物をモデルにした心温まるハートフル小説。

―出版をされたきっかけや目的は何ですか?

伊藤 亡き母が生前よりお気に入りの作品を本にしたかった夢を叶える為、また遺稿になってしまったので供養になればと。昔なら男性だと大切にしていた時計や万年筆、女性なら宝石や着物が形見の品として親族などに提供されますが、今は物が溢れた時代。こんな形の形見分けならいいのでは!と母を知る方々へお配りする事が出来ました。

 

―ご出版前後の変化(ご自身の気持ちの変化や、ご家族・知人の反応など)はございましたか?

伊藤 出版など人生初体験。出版経験豊富な顧問弁護士の先生にアドバイスを頂き決心が付きました。完成した本を手にした時はマラソンランナーがゴールした時の様な気持ちでした。

そして本を読まずに見つめているだけの日が何日も続きました。制作期間中に何度も何度も読み、お経の様に覚えているページがある程です。1か月以上経って母の仏前に供えてある本を手に取ると、ほのかにお線香の香りがしていました。やっと読む気持ちになって、春の陽だまりの下、庭のブランコに揺られながら…

作品を読んで下さった方のほとんどが「テレビドラマになりそう」「読みやすい内容で普段あまり読書しないけど一気読みした」「続編はないの?」とのご意見でした。そして「貴方のあとがきに泣いてしまった」とも。

 

―出版社、編集者とのやりとりで印象深かったことは何ですか。

伊藤 東京と神戸間で膨大な量の原稿用紙が電子メールのやり取りで、しかも訂正や追加などの書き込みも、吹き出し記入ができるソフトには驚きました。もちろんパソコンの前で何度も編集者の方と話しながら作業を進めて行けて超初心者の私にとって心丈夫でした。特にページの数字が入り本らしいひな形になった時、ここまで来たと気持ちが高ぶりました。

 

―自著の紹介(原稿に散りばめたこだわり、制作秘話など)をお願いいたします。

伊藤 テレビドラマだと必ず悪役やライバルが登場し、主人公の可哀そうなシーンが付き物です。何故かこの作品には無くスパイス不足かと思うのですが、そこはコテコテの大阪の乗りが感じさせないのかも。実在の主人公はいじめられたり泥棒と間違えられ警察に捕まりちゃんと喋れないので大泣きだったとか。

平凡な主婦が実在の主人公を思いのままフィクションドラマにしたものですから制作冒頭から実在固有名詞・放送禁止用語連発でした。ここを訂正したらお話が続かない、流れが変わると悪戦苦闘のつじつま合わせを思い出します。

表題と主人公をイメージした絵だけは表紙に出演したかったので、編集者の方から合格を頂けて嬉しかったです。

 

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