29歳で中途失聴となってから音の世界を取り戻すまでの30数年間の格闘の記録。ある日、音が一斉に逃げたかのように掻き消えた。それと引き換えに襲い掛かる耳鳴りと拍動という恐怖の雑音。昨日までの生活が一変、不安と孤独と苦痛の日々が始まった。今日は無事に乗り切っても明日はどう過ごすのか、一週間先、一カ月先がとてつもなく遠い。生きることに怯えながらも決して諦めず必死に歩んだ著者は60歳を目前にして人工内耳手術のチャンスを手に入れる。家族の愛と様々な人の善意に支えられて得た幸運。そして、必死の努力がもたらしたのは、夢にまでみた美しい音のあふれる世界だった。本書は、どんな困難な状況でも希望を失わず感謝して生きていれば、計りしれない喜びを得られることを教えてくれる一冊です。生きる勇気が湧いてきます。