著者が最初にカメラを手にしたのは、今から15年ほど前のこと。生まれ育った実家の取り壊しが決まり、思い出がたくさん詰まった家の姿を残しておきたいとその様子を撮ったのが最初という。以来、今にも壊れそうな廃家を中心に撮るようになった。廃家という題材以外に心を打つものがないかと思い始めた10年前、妻の勧めでベトナムを訪れた。そこで出会った現地の子どもたちの姿に、自分の子ども時代に戻ったような懐かしさを覚え、以来年３～４回のペースでベトナム、カンボジアを訪れるようになる。この写真集は、彼が平成14年に初めてその地を訪れて以来、7年間にわたりカンボジアの人々の懸命に生きる姿、たくましく生きる姿を撮った写暦15年の集大成である。被写体に真正面から向き合い、時代を鋭く見つめたカメラマン・立岡秀之の作品に、私たちは忘れかけられている家族のあり方を考えるきっかけとなる、旧き良き日本の原風景を重ね見ることができるだろう。