Presented by 幻冬舎ルネッサンス

特別連載インタビュー

大人になってから気づいた、作家から受けた影響“運命”だと思い、受け入れて生きていく

──作家になるにあたって影響を受けたものを挙げるとしたら。

 吉本:やっぱり、藤子不二雄先生、大島弓子先生が二大柱ですね。体に入っちゃってるから、運命としか言いようがないというか、どういう影響を受けたのかもわからないくらいです。

──『オバケのQ太郎』のQちゃんの入れ墨をしているくらい、藤子先生の作品は体の一部になっているわけで、『ドラえもん』もそうですが、異端の存在が違和感なく街に溶け込んでいる感じに惹かれたんでしょうか。

 吉本:そういうことに気づいたのって、もっと大人になってからですけどね。藤子先生の作品って、いまだに私の判断基準みたいなものに深く関わっているというか、これをするのはよくない、なんでかっていうとこういうことになっちゃうからみたいなことを子ども心に学んだ気がするんです。Qちゃんもどんどんアグレッシブに行動するんだけど、違うなと思ったら、やめるんですよ。道徳とかモラルとも違う、あのシニカルな感じとか、すごく影響を受けています。「ほかに選べなかったのか、私」ってたまに思うけど、これも運命だと思って受け入れて生きていこうと思います(笑)。

──大島弓子先生の場合も、特に好きな作品ってありますか。

 吉本:選べないですね。でも『バナナブレッドのプディング』はいまだに影響を受けているというか一言一句覚えている。当時の私がこの魅力は何だろうと思って読み込んだんだと思います。簡単に言っちゃうと、みんなへんな人なんだけど、いい人なんです。この世とのコミットの仕方、そのかねあいが、大島先生と似た資質なんだと思います。

──小説でいうと太宰治とスティーブン・キングあたりでしょうか。

 吉本:太宰先生の文庫をすべて読んだのは中学生くらいの頃ですね。面白いことを書いて面白いのは当たり前だけど、つまんないこと書いてても面白いって凄いと思って。アルバムでいうと捨て曲がない文章だなと。スティーヴン・キングさんは、体調を崩されたあたりで文体も崩れていたので一時期離れていましたけど、最近また徐々に復活されているので素晴らしいなと思います。普通あれだけ描写できるとそこで満足してしまうのが文章を書く人の気持ちだと思うんですけど、それをある一点に向けて集中させていくあの集中力は凄い。自分にはあそこまできないなと。

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