表現者の肖像 村松紀梨湖
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未来へのメッセージ

 今はがんちゃんも落ち着き、二週間に一度のオプジーボ投与や検査を受けること以外は入院することもなく、自宅で過ごしています。また、仕事にも復帰し、月に数回出張に飛びまわれるほどまで回復しました。長女と二人暮らしなので、食事に関しては彼女が体にやさしい献立を考えてくれていますが、卒煙もしましたので、現在はがんにかかる前よりも健康的な生活を送っています。
 この一年余り医療関係者の方々をはじめとして、いろいろな方との出会いがありました。自分が経験させてもらったことを伝えるべく生かされていると強く感じ、すべての巡り合わせは偶然ではなく必然であったと、出会った皆さんに感謝しています。今まで見過ごしてきたたくさんの幸せに気づいたのも、がんになってからです。これからもプラス思考になれることを拾い集めていきます。今後はこれまでがんであることを隠して悩んでいたり、一人になると弱気になってしまうがん患者の人たちと手をとって、皆さんの心が晴れやかになるよう、お手伝いができればと思っています。
 退院してちょうど一年が経ったころに病院のアンケートに答えましたが、何ページにもわたって「がん患者がどのような死を迎えることを望んでいるか」を問うものでした。これから生きようとしている人に対する質問とは思えず、医療現場の方々に、患者の回復を一番に考え、前向きに生きることを応援するような姿勢を根底に持ってほしいと強く思いました。最近、がん治療を受けられる患者さんの年齢が低くなっているように感じます。若い方の場合、最初は元気であっても進行が速いという話を耳にしました。また、医療従事者である看護師の方々の中にも、がんを患っている方がいらっしゃるのです。がんは今では日本人の二人に一人がかかる病気とされています。しかし、化学療法室には若い方でもやっとの思いで来ている人たちが大半です。少しでも前向きに生きる活力を患者に与えるようなケアが患者自身の力に委ねられるのではなく、医療現場の姿勢として必要なのではないでしょうか。
 がんを告知されてから一年以内に自殺する率は二十四倍にもなるそうです。とても悲しい現実ですが、がんのことをもっと事前に知っていれば、悲観して死を選ばなくてもいいはずです。がんにかかった方は全体で三分の二が治り、早期ならば九十五パーセントの人が治ると言われています。私は早期治療ができたわけではありませんが、無事余命3カ月から生還できました。がん患者の数だけ治療方法があり、私の治療プロセスが全ての方の参考になるとは思っておりません。しかし、少しでも多くの方に、がんとわかった際には「どうしよう」ではなく、まず自分も周りも大丈夫と思っていただきたいです。そのためにも私の経験が少しでも皆さんの心の支えとなり、勇気となることを願っています。

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