表現者の肖像 村松紀梨湖
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人生を変えた出会い

 私は五十歳を目前にして出会った人を心から愛しました。「この人と生きるために生まれてきた」と思えるほど愛した人です。お互いに最初の結婚を解消し、独りになって数年経ったころに知り合いました。はじめは「会社を興すから手伝ってくれない?」と頼まれて、事務作業などをしていましたが、彼の仕事に対する真摯な態度や行動力を間近で感じて、ますます惹かれていきました。彼が信頼のおける経営者を得て、営業部を運営する様子を見ていたら、私ももっと主体的に働いてみたいと思うようになりました。最初は働く必要はないと彼に説得されましたが、私がまじめに取り組みたいという気持ちを伝え、「絶対に愚痴は言いません」と言うと、それならやってごらんと応援してくれるようになりました。今では仕事は私にとって生きることそのものです。彼は私に一人の仕事人として生きることと、愛する人のために女性として生きることの両方を人生にもたらしてくれました。子育て期間も充実した日々を過ごしましたが、彼と暮らした年月は自分の喜びを最優先にしていい唯一無二のひとときでした。

 そんな時間も長くは続かず、彼は五十九歳で亡くなり、十二年が過ぎようとしていますが、今でも変わらず、彼のことを一人の人間として信頼し、尊敬し、心から愛しています。彼の死に関しては神秘的な体験があったことによって、私は死後も、彼は私のそばにいて私を守ってくれていると感じています。詳しくは書籍の中で、ご説明しましたが、私はこの世に守られていない人は存在しないと思っています。生まれたときから守護人さまがついており、その後も縁のある誰かが皆さんを見守っていると信じています。「愛する人がいなかった」、「結婚していなかったから」ではなく、自分のことを気にかけて必ず守ってくれている人がいる。目に見えない力が働いているということを信じて欲しいです。信じることで、幸せをたぐり寄せる力は増すと思います。また、私ががんを患いつつも前向きに日々を過ごせるのは、こうした力を信じ、「生かしていただいてありがとうございます」という感謝の気持ちを忘れず、心の健康を保っているからでもあると感じますね。

私(右)と愛する人と

幻冬舎ルネッサンス

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